EPAのはたらき
フルファイン TOPIC
5年後の脳を守る青魚のチカラ
もの忘れの背景には、脳の細胞や血管の微細な変化があります。5年後も脳の働きを維持するために青魚成分EPAが果たす役割について、日比野病院の佐藤先生にご寄稿いただきました。

佐藤 斉
日比野病院 脳神経外科 医局長 / 日本栄養治療学会 認定医 代議員
※略歴は未入稿□□□□□□□□□■□□□□□□□□□■□□□□□□□□□■□□□□□□□□□■
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加齢による衰えと「要注意なもの忘れ」の違い
脳神経外科の現場では、多くの患者様から「最近、もの忘れが増えた」という相談をいただきます。もの忘れは単なる老化現象だと片付けられがちですが、じつはその背後には見過ごせないサインが隠れていることがあります。
まず知っていただきたいのは、「自然なもの忘れ」と「要注意なもの忘れ」の違いです。例えば、人の名前がパッと出てこなくても、ヒントがあれば思い出せるのであれば、それは加齢によるもので自然な範囲と言えます。しかし、同じことを何度も聞いたり、名前そのものが全く思い出せなくなったり、あるいは日常生活に支障が出始めている場合は、注意が必要です。
こうした 状態は「軽度認知障害(MCI)」と呼ばれ、認知症の一歩手前の段階とされています。日常生活は何とかこなせるものの、記憶力などの認知機能が年齢相応以上に低下している状態です。放置すれば数年以内に認知症へ進行する可能性が高いですが、この段階で早期に対策を始めれば、5年後、10年後の認知機能のリスクを回避できます。逆に言えば、まだ大丈夫と思っている今こそ、対策の「チャンス」でもあるのです。
多価不飽和脂肪酸に脳の萎縮を防ぐ効果
脳の健康を考える上で避けて通れない事実があります。それは、脳の萎縮は40代という比較的早い段階から始まり、放置するとそのスピードは年々加速していくということです。
しかし、希望となる研究データもあります。国立長寿医療研究センターの研究によれば、多価不飽和脂肪酸を多く摂っている人ほど、脳の重要な部位である前頭葉や側頭葉の体積減少が少ないことが明らかになりました。つまり、日々の栄 養摂取によって、脳の若さを保てる可能性があるのです。特に、青魚に豊富に含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)は、脳の萎縮を防ぎ、脳の若さを維持するための鍵となる栄養素として注目されています。
毎日摂取する必要があるEPA
EPAは、なぜこれほどまでに脳の健康に寄与するのでしょうか。その理由は、私たちの細胞の構造にあります。 EPAは、脳の細胞膜を構成する重要な材料です。私たちの脳を構成する膨大な数の神経細胞は、この細胞膜を介して情報のやり取りを行っています。もしEPAが不足して細胞膜が健康な状態を保てなくなれば、神経細胞の働きそのものが低下してしまうのです。
また、EPAは体内で合成することができない必須脂肪酸であり、毎日の食事から補う必要があります。さらに重要な点として、EPAは体内で必要に応じてDHA(ドコサヘキサエン酸)へと変換される性質を持っています。そのため、EPAを十分に摂取することは、脳や網膜の健康維持に欠かせな いDHAを補うことにもつながるのです。
脳の健康維持の他にもあるEPAの恩恵
EPAがもたらす恩恵は、多岐にわたります。大きく分けて、以下の4つの側面から私たちの健康を支えてくれます。
1. 脳の健康維持
認知機能の維持・改善が期待でき、加齢に伴う脳の変化を和らげる作用があります。
2. 炎症を抑える
体内で起こる慢性的な炎症を抑制します。様々な生活習慣病の予防にもつながります。
3. 血流・血管の健康
血液サラサラ効果により、心血管の健康を維持します。中性脂肪を下げる働きも。
4. 気分・免疫の調整
うつ症状の改善や免疫力のバランス調整にも関わることが報告されています。
毎日の摂取習慣を助けてくれるサプリメント
では、1日にどれくらいのEPAを摂取すればいいのでしょうか。 厚生労働省の食事摂取基準では、ω-3系脂肪酸を1日700~2,300mg摂取することが推奨されています。特に脳の健康維持を目的とするなら、1日1,000mg以上を継続的に摂ることが望ましいと考えられます。焼き魚なら手のひらサイズ1切れに相当する量ですが、ここで一つ落とし穴があります。食事から摂ったEPAは、全体の2割程度しか体内に吸収されないという報告があるのです。とはいえ、毎日何切れもの魚を食べ続けるのは現実的ではありません。
そこで賢く活用したいのが、高純度なEPAサプリメントです。良いサプリメントを選ぶポイントは以下の4点です。
・1日1,000mg以上のEPAがしっかり摂れること。
・酸化しやすい成分であるため、ビタミンEなどの酸化対策がなされていること。
・重金属検査など、安全性が明記されていること。
・高純度なものであること。
今日の選択は、5年後の自分への贈りもの
脳の健康維持は、決して特別なことではありません。今日からできる「4つの脳活習慣」を意識してみてください。
1. 軽い運動
散歩やストレッチなど、20~30分の有酸素運動が脳への血流を高めます。
2. 脳への刺激
毎日の新聞読みや数独・クロスワードパズルなどで脳に適度な刺激を与えましょう。
3. 青魚を食べる
EPA・DHAが豊富な青魚を日々の食卓に。手軽なサバ缶やサンマ缶も上手に活用。
4. サプリの活用
食事だけでは補いきれない分をサプリで補給。毎日コツコツと継続することが大切です。
「もう年のせいだから」と諦める必要はありません。脳の健康は、今日あなたが何を選び、何を口にするかで決まります。5年後、10年後も自分らしく、健やかな毎日を過ごすために、今こそEPA摂取の習慣を始めてみませんか。未来のあなたは、きっと今日のあなたの選択に感謝することでしょう。
[参考文献]
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Tokuda H, et al. Neurobiol Aging. 2022;117:179-188.
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Gorjao R, et al. Pharmacol Ther. 2009;122(1):56-64. (Gorjaoのaは上に波線)
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Gow RV, et al. Prostaglandins Leukot Essent Fatty Acids. 2013;88(6):429-429.
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厚生労働省「認知症および軽度認知障害(MCI)の高齢者数と有病率の将来推計」(2023)
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厚生労働省「MCIハンドブック」(2023)/「日本人の食事摂取基準(2025年版)」





