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EPAのはたらき

フルファイン TOPIC

EPAのはたらき

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EPAの免疫賦活と腎疾患の有効性

主に青魚に多く含まれることが広く知られており、人の健康に寄与する効果があるという研究報告があるEPA。

今回は、EPAが免疫系や腎疾患に与える影響について、国際医療福祉大学病院・宮澤先生にご寄稿いただきました。

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宮澤 靖

国際医療福祉大学病院 栃木地区料飲部門室長 

1987年 北里大学保健衛生専門学院栄養科を卒業後、篠ノ井総合病院栄養科に入職。1993年 エモリー大学医学部臓器移植外科 栄養代謝サポートチームに留学。2002年 医療法人近森会の栄養科長となる。2009年 社会医療法人近森会臨床栄養部部長および栄養サポートセンター長として勤務。2019年 東京医科大学病院栄養管理科科長兼東京医科大学医学部講師。2025年現職。

エイコサペンタエン酸(EPA)は、ω-3系多価不飽和脂肪酸の一種であり、主に魚油に含まれる重要な脂肪酸です。EPAは健康に対して多くの有益な効果を持つことが知られており、その中には免疫系の賦活効果も含まれています。ここでは、EPAが免疫系および腎疾患に与える影響について説明していきます。

1. 抗炎症作用

EPAは抗炎症作用を持つことが知られています 1)。炎症は免疫応答の一部ですが、慢性的な炎症は健康に悪影響を与えることがあります。EPAはプロスタグランジンE2やロイコトリエンB4などの炎症促進メディエーターの生成を抑制し、代わりに抗炎症作用を持つエイコサノイドの生成を促進します。これにより、炎症反応が調節され、慢性炎症疾患のリスクが低減されます 2)

2. 免疫細胞の機能調整

EPAはさまざまな免疫細胞の機能を調整することができます。例えば、EPAはT細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージなどの免疫細胞に影響を与えます。EPAはこれらの細胞の膜脂質の構成成分となり、細胞膜の流動性を向上させ、シグナル伝達を改善します。これにより、免疫応答がより効率的に行われるようになります 3)

3. サイトカインの産生調整

サイトカインは免疫応答を調節する重要な分子であり、EPAはこれらの産生にも影響を与えます。EPAは炎症性サイトカイン(例:インターロイキン-1β、インターロイキン-6、腫瘍壊死因子α)の産生を抑制し、抗炎症性サイトカイン(例:インターロイキン-10)の産生を促進します。これにより、過度な炎症反応を防ぎ、免疫系のバランスを保つ 4,5)ことができます。

4. 脂質メディエーターの生成

EPAはレゾルビン、プロテクチン、マレキンなどの抗炎症および炎症解消メディエーターの前駆体となります。これらの脂質メディエーターは炎症反応の終結を促進し、組織の修復を助けます。これにより、急性の免疫応答が効率的に解消され、組織の恒常性が回復されます 6)

5. 臨床応用と健康効果

EPAの免疫賦活効果は、さまざまな健康状態において臨床的に応用されています。例えば、EPAのサプリメントは関節リウマチ、炎症性腸疾患、アトピー性皮膚炎などの炎症性疾患の症状軽減に役立つとされています。また、EPAは心血管疾患のリスク低減にも寄与することが示されています 7)

6. 腎疾患に対する効果

EPAは腎疾患、特に慢性腎臓病(CKD)に対しても有益な効果を持つことが研究で示されています 8)。EPAの抗炎症作用は、腎臓の炎症を軽減し、腎機能の低下を遅らせるのに役立ちます。さらに、EPAは血管内皮の機能を改善し、血圧の調節にも寄与するため、腎疾患の進行を抑制する可能性があります。特に、EPAは高トリグリセリド血症の患者において、血清トリグリセリド濃度を低下させることで、腎臓への負担を軽減する役割も果たします。EPAのサプリメントは、腎疾患の管理および進行抑制において有望な補完療法とされています。

7. 血圧と血管内皮機能の改善

高血圧はCKDの主要なリスク因子であり、腎機能の低下を加速させます。EPAは血管拡張作用を持ち、血圧を低下させる効果があります 4)。具体的には、EPAは一酸化窒素(NO)の産生を促進し、血管内皮機能を改善します。これにより、血管の弾力性が向上し、血流が改善されるため、腎臓への血流も確保されます。

8. 腎糸球体の保護

EPAは腎糸球体の保護作用を持つことが報告されています。具体的には、EPAはメサンギウム細胞の増殖や基質の蓄積を抑制し、腎糸球体の硬化を防ぎます。また、EPAは尿中アルブミン排泄量を減少させることが示されており、これは腎機能の改善を示す指標です 9)

9. 臨床試験における証拠

複数の臨床試験がEPAのCKD患者に対する有効性を評価しています。例えば、EPAサプリメントを摂取したCKD患者では、腎機能の低下速度が遅くなることが示されています 9)。また、EPAは透析患者においても炎症マーカーの減少や心血管イベントのリスク低減に寄与することが報告 10)されています。

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まとめ

EPAは、抗炎症作用、免疫細胞の機能調整、サイトカイン産生の調整、脂質メディエーターの生成などを通じて、免疫系に多方面から賦活効果を発揮します。さらに、EPAは腎疾患に対しても有益な効果を持ち、腎機能の保護や病態進行の抑制に寄与します。これにより、炎症性疾患や腎疾患の予防や治療において重要な役割を果たしています。EPAの適切な摂取は、免疫機能を最適化し、全体的な健康状態の向上に寄与します。

[参考文献]

1)    Calder, P. C. Polyunsaturated fatty acids and inflammation. Prostaglandins Leukot Essent Fatty Acids. 75(3):197-202.2006.

2)    Calder, P. C. Omega-3 fatty acids and inflammatory processes. Nutrients. 2(3):355-374. 2010

3)    Calder, P. C. (2008). The relationship between the fatty acid composition of immune cells and their function. *Prostaglandins, Leukotrienes and Essential Fatty Acids, 79*(3-5), 101-108.

4)    Calder, P. C. Long-chain fatty acids and inflammation. Proc Nutr Soc. 71(2):284-289. 2012. 

5)    Serhan CN, Clish CB, Brannon J, Colgan SP, Chiang N, Gronert K. J Exp Med.16;192(8):1197-204. 2000

6)    Park CK, Lü N, Xu ZZ, Liu T, Serhan CN, Ji RR. Resolving TRPV1- and TNF-α-mediated spinal cord synaptic plasticity and inflammatory pain with neuroprotectin D1. J Neurosci. 19;31(42):15072-15085. 2011

7)    Simopoulos, A. P. Omega-3 fatty acids in inflammation and autoimmune diseases. J Am Coll Nutr. 21(6):495-505. 2002

8)    Ya-Ling Lin, Chia-Liang Wang, Kai-Li Liu, Cheng-Nan Yeh, Tsay-I Chiang. Omega-3 Fatty Acids Improve Chronic Kidney Disease-Associated Pruritus and Inflammation. Medicina.13;58(6):796. 2022

9)    Poudel, B., Bhatta, N. Omega-3 fatty acids in chronic kidney disease: An update. Journal of Clinical Medicine Research, 8(6), 363-367. 2016

10)    Rosalia Crupi, Salvatore Cuzzocrea. Role of EPA in Inflammation: Mechanisms, Effects, and Clinical Relevance. Biomolecules.1;12(2):242. 2022

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